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会計事務所の所長が「管理疲れ」で倒れる前に知っておきたいこと

先日、あるクライアント先生とのコンサルティング面談の中で、
印象的な一言が出ました。

「社員にそんなことを言われて、
私は傷ついたんだな、と今気づいた。」

先生はそれを、面談の話の流れの中で
ふと、静かに言ったんです。

傷ついたという事実に、
その瞬間まで自分でも気づいていなかった。

これ、所長先生にはあるあるだと思います。

顧客のために動き、
職員のために動き、
事務所のために動く。

その日々の中で、
自分がどれだけ消耗しているか、
どれだけ傷ついているかを、
一番後回しにしてしまうのが所長先生なんです。

〜〜〜〜

目次

「管理疲れ」は、所長の意志の問題ではない

こういう話をすると、
「私がもっとしっかりしなきゃいけない」
「所長がメンタルで折れてどうする」
と思われる先生がいます。

でも、私はそうは思いません。

管理疲れは、
意志の強さや気合いで解決できるものではないんです。

それは、仕組みと設計の問題です。

実際に私がよく見ているのは、こんな状況です。

  • 問題社員への対応が長引いて、精神的に消耗している
  • 消耗した結果、職員との面談が止まってしまう
  • 面談が止まると、職員の不満や変化が見えなくなる
  • 見えなくなった不満が、退職や問題行動として噴出する
  • また対応に追われて、さらに消耗する

この悪循環、
心当たりある先生、いらっしゃいませんか?

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「ふわっと採用」が数年後に管理疲れを生む

ふわっと採用が数年後に管理疲れを生む構造のイラスト

管理疲れを語るとき、
多くの先生は「今いる社員の問題」として捉えます。

でも、その根っこをたどると、
数年前の採用メッセージに行き着くことが多いです。

入ってくれた最初は「助かった」と感じていた

人材難の時代です。

応募が来ただけでありがたい、
入ってくれただけで助かる、という感覚は
正直なところ、多くの先生が持っていると思います。

実際、入社直後は戦力になってくれます。
記帳入力を手伝ってもらえる、
電話対応をしてもらえる、
繁忙期を乗り越えられた。

「採用してよかった」と感じる瞬間は、たしかにある。

でも、1年後に見えてくること

問題が出てくるのは、たいてい入社から半年〜1年後です。

私がよくお伺いするのは、こういったお話です。

  • 一向に成長していない。同じミスを繰り返す
  • 責任感がなく、「言われたことだけ」やる姿勢が変わらない
  • 困ったらすぐに相談が来て、自分で考えようとしない
  • ベテランと新人の間で対立が生まれている
  • 「もっと責任を持ってほしい」と伝えると、急に辞める話が出てくる

「なんでこんなことに……」と感じる先生、多いと思います。

でも、これは本人だけの問題ではありません。

これは3つの問題が重なって起きている

こういった状況は、3つの問題が重なって起きています。

① 採用メッセージの問題

「残業なし・責任は軽め・ゆっくり働けます」という言葉で集めると、
そのメッセージに引き寄せられた人が来ます。

責任を求めない環境を求めていた人に、
1年後に「もっと主体的に動いてほしい」と伝えても、
「聞いていた話と違う」となるのは、ある意味で当然です。

採用で何を伝えたか、が入社後の行動の基準になっています。

② オンボーディングの問題

入社後、何をどう教えたか。

「仕事は見て覚えてほしい」
「わからないことは聞いてくれれば」

こういった形でスタートした事務所では、
職員は「自分が何をどこまでやればいいか」を
最後まで理解できないまま動いています。

教わっていないことを「できない」と言われても、
本人には責める理由がない。

「困ったらすぐ相談が来る」という状況も、
自分で判断する基準を渡していないことが原因であることが多いです。

③ 基準の問題

何を期待しているか、文書で伝えたことがあるか。

「これくらいできてほしい」
「こういう姿勢で仕事してほしい」

これが口頭・感覚だけで運用されていると、
先生の頭の中にしか基準が存在しません。

評価面談をしようとしても、
「何を基準に話せばいいか」がないため、
感情のぶつかり合いになりやすい。

ベテランと新人の対立も、
「何が正しい仕事の進め方か」が共通言語になっていないから起きることが多い。

〜〜〜〜

この3つは、バラバラに起きているのではなく、
つながって一つの構造を作っています。

採用メッセージで「責任が軽い職場」と伝え、
入社後のオンボーディングで「何をすべきか」を整備せず、
基準も文書化されていない。

この状態で「もっと頑張ってほしい」と言い続けると、
先生だけが消耗します。

ここで大切なのは、責めることではありません。

採用で伝えたメッセージ、
入社後の受け入れ設計、
期待値の言語化。

これらは先生が決めてきたことです。
だからこそ、先生が設計を変えることで、状況は変えられます。

「あの人が悪い」で終わらせず、
「どこから設計し直すか」に目を向けること。

それが、消耗のサイクルから抜け出すスタートなのではないでしょうか。

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面談が止まる理由は「しんどいから」だけではない

面談が止まる理由を示すイラスト

私が関わっているある会計事務所の先生の話をします。
(一部、事実を変えてご紹介しています)

7名規模のフルリモートの事務所で、
ここ数ヶ月、ある職員の問題対応が続いていました。

その対応の中で、先生は精神的にかなり消耗してしまった。
奥様も影響を受けるほど、家庭にも波及していたと言います。

その結果として起きたのが、
職員との定期面談の完全停止でした。

先生の本音はこうです。

「くだらない話を聞きたくないんだよね、正直なところ」

これ、怠慢だと思いますか?

私は全然そう思いません。

これだけ消耗した状態で、
誰でも面談のドアを開けるのはしんどいです。

ただ、問題なのは、
面談が止まることで情報が止まることです。

職員が何を考えているか、
何に困っているか、
何に不満を持っているか。

それが見えなくなると、
事務所の運営は「先生の感覚だけ」で動くことになる。

そして気づいたときには、
退職や問題が起きていた、という状態になります。

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面談が止まる本当の原因は「基準がないこと」

面談が止まる本当の原因は基準がないことを示す図解

ここが核心です。

面談がしんどくなる一番の理由は、
「何を話せばいいか、基準がない状態で向き合うから」です。

ルールも、評価基準も、
行動の基準も文書化されていない状態で面談をしようとすると、
すべての会話が「個人の感情のぶつかり合い」になりやすい。

「もっと頑張ってほしい」
「ちゃんとやってください」

こういう言葉しか出てこない。

それは、基準がないから言葉が曖昧になるんです。

逆に言えば、
ルールブックや行動基準が先にあれば、面談は「基準の確認作業」になります。

「この基準に照らして、あなたはここができていますね」
「ここはもう少しこうしてほしいです」

感情ではなく、事実と基準で話せる。

それが、面談の心理的ハードルを劇的に下げます。

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所長が消耗する3つの構造的な原因

所長が消耗する3つの構造的な原因の図解

管理疲れは個人の問題ではなく、
事務所の構造から生まれています。

① 採用・オンボーディング・基準の3つが整っていない

先ほど書いた「ふわっと採用」の問題です。

「なぜこの人は動いてくれないんだ」と向き合い続けても、
答えは出ません。

採用メッセージ、入社後の受け入れ、期待値の言語化。
この3つを設計し直すことが、消耗を止める入口になります。

② ルールと基準が口頭・感覚で運用されている

「常識的に考えてわかるはず」
「前にも言ったはず」

文書化されていないルールは、
先生の頭の中にしか存在しません。

先生は「伝えた」と思っている。
職員は「聞いていない・そういう意図だとは思わなかった」と言う。

このすれ違いが繰り返されるたびに、
先生は消耗します。

解決策は、ルールを文書にして「見せられる状態」にすること。
それだけで、多くのすれ違いは防げます。

③ 所長が「最後の砦」になっている

問題が起きたとき、すべてが所長に集まってくる事務所があります。

職員のミス、顧客からのクレーム、
採用、育成、面談、決算、申告。

「最後は全部自分が引き受ける」という構造では、
どんなに能力がある先生でも、
いつか限界が来ます。

これは先生の頑張りが足りないのではなく、
分散できる仕組みがないことの問題です。

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「管理を突き詰めれば幸せになれる」は幻想

ここで一つ、重要なことをお伝えしたいです。

管理を厳しくすれば、
面談を増やせば、
ルールを増やせば、
職員が育って所長が楽になる。

これは、半分正しくて半分間違いです。

管理を突き詰めたからといって、
先生が幸せになれるわけでも、
職員が高い生産性を発揮できるわけでもない。

管理は、目的ではなく手段です。

何のために管理するのか。

それは、
「所長が無理しなくても、事務所が回る状態を作るため」です。

先生が消耗しきってしまったら、
判断力が下がり、
職員への関わりが減り、
顧客へのサービスの質も下がります。

所長が元気でいることは、
事務所経営の最重要指標の一つだと、私は思っています。

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「管理疲れ」から抜け出すための3つのステップ

では、具体的にどうすればいいか。
私が現場でおすすめしているのは、以下の3ステップです。

ステップ①:ルールブックを先に作る(面談より先に)

多くの先生が「まず面談を再開しよう」と考えます。

でも順番が逆です。

先にルールブック・行動基準を整備してください。

内容は難しくなくていい。

「こういう行動をしてほしい」
「こういう状態がNGです」
「この場合はこう判断してください」

A4で数枚でも、
文書として存在するだけで、面談の質が変わります。

私のコンサルでは、3回のミーティングで基本的なルールブックを完成させています。
それだけで、面談を再開するハードルが下がった先生が何人もいます。

ステップ②:「個人の問題」と「構造の問題」を仕分ける

今、消耗の原因になっている問題は、
本当にその人個人の問題ですか?

採用メッセージが生んだミスマッチではないですか?
オンボーディングが整っていなかったことで生まれたギャップではないですか?
基準がなかったことで起きたすれ違いではないですか?

「この人が悪い」で終わらせると、
次の人が来たときに同じことが起きます。

仕分けることで、
解決できる問題と、
向き合い方を変えるべき問題が見えてきます。

ステップ③:所長自身の「消耗サイン」を把握する

これが一番見落とされがちです。

面談を避けたくなる。
くだらない話を聞きたくないと感じる。
何もかも自分でやった方が早いと思う。

これらは、「怠慢」や「意欲の低下」ではありません。
消耗のサインです。

消耗しているときに、
無理やり面談を再開しても、
かえって関係が悪化することがあります。

まず先生自身が「今、消耗している」と認識することが、
回復への第一歩です。

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コンサルティングはメンタルケアでもある

コンサルティングがメンタルケアでもあることを示すイラスト

最初に書いたクライアントの先生の話に戻ります。

「社員にそんなことを言われて、私は傷ついたんだな」

その言葉を聞いて、私は思いました。

この気づき自体が、すごく大事だと。

所長先生は、
クライアントの感情には丁寧に向き合います。
職員の悩みにも一生懸命応えようとします。

でも、自分が傷ついていることには、
一番気づくのが遅い。

コンサルティングの仕事をしていて、
業務設計や組織設計の話だけでなく、
「先生自身が今どんな状態にあるか」を確認することが、
実はとても重要だと感じています。

仕組みを整えることと、
先生自身が元気でいることは、
どちらも欠かせません。

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まとめ:管理疲れは防げる

管理疲れは防げるというまとめイラスト

管理疲れは、
先生の性格や意志の問題ではありません。

仕組みと設計で、かなりの部分が防げます。

  • 採用メッセージ・オンボーディング・基準の3つを見直す
  • ルールブックを先に作る
  • 問題を構造として捉え直す
  • 所長自身の消耗サインを見逃さない

この4つを意識するだけで、
事務所の空気は変わります。

そして何より、
先生が笑顔でいられる事務所が、
職員にとっても、顧客にとっても、
一番いい事務所だと私は思っています。

もし「うちの事務所、当てはまるかも」と感じた先生がいれば、
気軽にご相談ください。
一緒に整理していきましょう。

今日も良い一日を!

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