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事務所が10名を超えたら、業務管理なしでは限界が来る理由

会計事務所組織成長と業務管理イラスト

先日、ご支援先の所長先生とこんな話になりました。

「大須賀さん、うちって今5人なんですけど、
なんか最近、仕事の回り方がなんとなく怪しくなってきた気がするんですよね。」

なんとなく、というのがポイントです。

明確に何か壊れたわけじゃない。

でも、どこかにひずみが生まれている感じがする。

そういう”もやっとした感覚”を持ち始めた先生が、
実はものすごく大事なタイミングにいると思っています。

今日は、なぜ今、業務管理が必要なのかというテーマで、
規模別にやるべきことが変わる話をしていきます。

少し長いですが、自分の事務所の”今”と照らし合わせながら読んでいただけると嬉しいです。

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目次

【規模別】やるべきことは、フェーズで変わる

まず大前提として、事務所の規模によってやるべきことは変わります。

1人〜5人のフェーズでやるべきことの中心は、だいたいこのあたりです。

・集客ルートの構築(直接紹介・間接紹介・Webサイトなど)
・契約書・料金表の整備
・基本的な業務方針の設定(クラウド特化か、既存顧客メインか)
・初めての採用と出退勤ルール作り ・事務所としての方向性の言語化

このフェーズでは、とにかく事務所として動き出す土台を整えることが最優先です。

業務管理?それよりまず仕事を取らないと、という話ですよね。

実際、2〜3名の事務所で「業務管理ツールが必要か悩んでます」という相談をいただくことがありますが、
正直まだそこじゃないかな、と思うこともあります。

もちろん、早めに準備しておくことには大きな意味があります。

でもそれより先にやることがある。

ちなみに、この時期によくある選択として、
例えば同じ若手社長の支援としても、
freeeで極力自動化しタイパをよくするのか、
マネーフォワードを軸に既存のお客様から乗り換えを受けていくのか、
といった顧客ターゲットやどんなサービスを提供するのか という方向性の問題があります。

どちらが正解かではなく、事務所の特性とマーケットに合っているかが大事なんです。

都心でfreee特化という事務所はたくさんありますし、
地方ではマネーフォワードを使う事務所が多い。

なぜかというと、
freeeは普通の会計ソフトと異なるため、一定以上のITに詳しい人(お客様も社員も)がいないといけないからです。
それでも、都心ならfreeeを使うお客さんに絞って集客ができます。
また、
クラウド会計の導入指導に対応できる人材の育成が難しいこと、
お客様の側でもfreee乗り換えのハードルが高いことがあるため、freeeで増やそうとする事務所は都心に多いです。

都心以外のエリアでMF活用事務所が多いのは、既存の会計ソフトからの乗り換えがスムーズにできて、
かつクラウド会計の便利さもいい感じに享受できるからです。

また、MFを使ってもfreeeを使っても、若手社長をターゲットにしても、
面談頻度や付加価値によって、報酬も全く異なります。

まずはこういった方向性を明確にして、
定期的に紹介が来るルートを複数作っていく。

さらにいうと、自分1人でやるのか組織にするのか、超長期的な方向性も決める必要があります。

それがこのフェーズの仕事だと思います。

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【5人前後で起きること】4000〜5000万円の壁

パートさん2〜3人と正社員1〜2人くらいの規模、
売上高でいうと4000〜5000万円あたりになってくると、 必要なものが変わってきます。

・業務分担と正社員の雇用 ・業務管理と進捗管理の設計 ・労務環境の整備

このフェーズでは、事務所としての”型”を作ることが必要になります。

ここで面白いことが起きます。

意外とこのくらいまで伸びる先生はたくさんいらっしゃるんです。

でも、その先に行けるかどうかで、大きな差が生まれる。

5人から10人に行くとき。 売上高でいうと5000万から1億を超えるとき。

ここに、本当に大きな壁があります。

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【5人→10人の壁】ここで止まる事務所が多い理由

5人から10人の壁で止まる事務所が多い理由のイラスト

この壁、何が変わるのか。3つお話します。

変化①:集客の仕方が変わる

10名規模になると、集客の設計を意識的にやらないといけなくなります。

なぜかというと、どんな事務所でも解約は一定の割合で発生するからです。

お客様が廃業される、担当者と合わなかった、他の事務所に乗り換えた。
理由はいろいろありますが、解約率がゼロという事務所はありません。

つまり、現状維持するだけでも毎年一定数の新規顧客が必要で、
さらに拡大しようとすれば、それ以上の数が必要になります。

では、どう設計するか。

私がよくお伝えするのは、紹介チャンネルの足し算という考え方です。

例えば、1人の紹介パートナーが年間3件紹介してくれるとします。
そういった方が10人いれば、年間30件。
そこにWebからの流入が年間20件加われば、合計50件になります。

紹介だけに頼っていると「同じ人が何件も紹介してくれる」という幸運に依存しがちで、 ルートが細い。

だから複数チャンネルを意識的に組み合わせる設計が必要になるんです。

もう一つ、忘れてほしくないのが既存のお客様からの紹介率の管理です。

顧客紹介率というのは、だいたい「お客様100名に対して何件紹介をいただけるか」で測ることができます。

私の肌感覚だと、普通の事務所で4〜5%、 サービス品質が高く顧客との関係が濃い事務所で10〜15%というイメージです。

もし紹介率が5%を下回っているようなら、
顧客とのコミュニケーションスタイルを見直す必要があるかもしれません。

逆に言うと、顧客サービスの充実と紹介依頼のアクションを組み合わせることで、
この数字は改善できるということでもあります。

「紹介してもらうために何かする」というより、
「ちゃんとサービスして、それを伝えれば、自然と紹介は生まれる」という感覚で取り組むのが近道です。

こういった集客チャンネルの設計に所長先生が時間を使えるようにするためには、
社内業務を任せられる人が必要になる。

だからリーダーNo.2の任命が、10名規模になるときの肝になります。

変化②:5人で頼りになる人と、10人で頼りになる人は違う

これ、本当に多くの先生が驚かれるところです。

5人のときに「この人がいれば安心」と思えていた方が、 10人になったとき、部下を育てたり、チームをまとめる役割を担えるかというと、 必ずしもそうじゃないんです。

5人規模で頼りになる人材というのは、 スキルがあって、ある程度自分でどんどん仕事ができる人です。

でも10名規模で必要なのは、 一定のスキルを持ちながら、人に教えることができる人材なんです。

ここの差がすごくあって。

「ベテランで頼りになるけど、後輩に対してちょっときつめのことを言ってしまう。」 「あの人とコミュニケーション取りたくないっていう空気になってしまっている。」

こういう相談、本当によくいただきます。

自分の仕事だけ粛々とこなすのが得意な人が、 いきなり組織を作る役割を担うわけがないんですよね。

変わるとしても、時間がかかります。

だから5人のうちから、10名規模を見据えた採用と育成を考えないといけない。 これが、多くの先生が後になって気づかれることです。

変化③:採用の量と質が変わる

10名規模を維持・拡大するためには、毎年2〜3名の採用が必要になります。

毎年1人取っていたころと比べると、3倍のリソースがかかります。

ということは、キャリアパス、育成プラン、初期研修の設計が必要になってくる。 「入ってきたら教えます」では間に合わなくなるんです。

「型」がないと、採用コストをかけても、育てられない。 育てられないから、また採用する。 これが続く事務所は、どこかで疲弊していきます。

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【5000万で止まることのリスク】先生がずっと走り続ける組織

5000万で止まることのリスクと所長が走り続ける構造のイラスト

ここで少し立ち止まって、考えてみてください。

「5人で売上5000万、所長所得2000万ぐらいあれば、別に問題ないじゃないか」

そう思われる先生もいらっしゃいます。

確かに、それ自体は悪くない。

ただ、その状態には一つ大きな前提が必要です。

先生が、ずっと頑張り続けること。

10年選手の職員さんが退職しました、というだけで、 5人が4人になって、3人になって。 1人減ったときの負荷が、小さい組織ほど激しいんです。

担当者が2人しかいないチームで1人辞めたら、 残った1人の件数が倍になります。 普通に考えたら、そうなりますよね。

その状況を見ていた別の職員さんはどう思うか。

「あんなに仕事が増えるなら、私もいつかああなるかもしれない。」 「何か問題が起きたとき、自分にも皺寄せが来そうで怖い。」

そう思って、問題がなかった人まで辞めていく。

これが連鎖退職です。

1人辞め出すと「辞めていいんだ」というムードにもなるし、 「自分に仕事が来るかもしれない」という恐怖で動く人もいる。

だから守ってあげないといけないんです。

「このタイミングで人を入れるから、もうちょっとだけ頑張ってもらえますか」
「みんなに極端には振らないようにする」

ゴールを示さないと、人は不安のまま走り続けることになります。

そしてその先に必ず必要なのが、標準業務なんです。

「この顧問料に対して、うちの事務所として何をするか」が決まっていれば、 誰でも一定水準で動ける。 採用できる人材の幅が広がる。 高い報酬を出せるだけの利益率になっているかどうかの判断もできる。

これが、拡大するための地力になります。

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【業務管理の有無が明暗を分ける】早く始めた事務所が伸びる

業務管理の有無が事務所の成長を分けることを示す図解

ここで、業務管理という話が出てきます。

実際、弊社でご支援してきた事例を振り返ると、
3人くらいのタイミングで業務管理の仕組みを整えた事務所が、一番伸びが早いんです。

5人〜10人になってから整えようとした事務所は、 組織の体制が中途半端に固まってしまっていたり、 変えようとしたときに反発が出たりすることがある。

早い段階で入れた事務所は、5年で15〜17名、5年で1億超えというペースで成長していることが多いです。

1億を超えたときの内訳も様々で、 先生が3000万持ちながら職員が監査メインという形もあれば、 職員全員が同じ水準のお客様を担当してチームで回している形もある。

いろんな姿があるんですけど、共通しているのは、 早い段階から、組織として動くための仕組みを用意していたという点です。

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【現場で起きること】5〜10人規模のあるある

5〜10人規模の会計事務所で起きるあるある場面のイラスト

5人から10人のフェーズで、私がよく聞く相談をいくつかご紹介します。

「誰がボールを持っているかわからない」

もぐらたたき管理、と言ったりします。 何かが進んでいるはずなのに、どこで止まっているかわからない。 ひょこっと問題が顔を出したときに慌てて対処する。 これが常態化している状態ですね。

「言ったつもりが、やられていなかった」

「先月のお客様への資料送りましたよね?」 「あれ、どうなってますか?」

言った事実はある。 でも確認する仕組みがなかったから、後から発覚する。

これが頻発するようになると、 所長先生の頭の中が「追いかけるリスト」でいっぱいになっていきます。

「突発業務が起きたとき、管理が追いつかない」

急なお客様の対応や、イレギュラーな案件が入ったとき、 誰に振ればいいか、誰に余裕があるかが瞬時にわからない。

だから管理者のいる人が全部抱えてしまう。 または所長が全部巻き取ってしまう。

「管理者に昇格させたら、次の月曜日から来なくなった」

これは実際にあった話です。

ずっと自分の仕事を粛々とこなしていた職員さんが、 マネージャーに昇格した翌週から来なくなってしまった。

いきなり部下が4人増えて、自分の仕事をしながら他の人のチェックもする。 その重さに耐えられなくなってしまったんです。

マネジメント経験のない人に、準備なしで管理職を任せる。 これは、本人にとっても、事務所にとっても、リスクなんです。

こういったことが、業務管理の設計がないまま規模を大きくしようとすると起きてきます。

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【私がいつも思うこと】相続対策と同じだな、と

業務管理は相続対策と同じという考え方のイラスト

ここからが、今日一番お伝えしたいことです。

私は会計事務所の先生と話していると、いつもある場面を思い出します。

相続対策の話です。

ご存知の通り、先生方のお客様の中には、
「うちは相続なんてまだ先のこと」と思っていた方が、 突然お父様が亡くなって、
初めて現実に向き合うケースがあります。

蓋を開けてみたら、財産がほぼ全部現金。
不動産もなければ、生命保険も最小限。
信託もやっていない。 遺言書も書いていない。

相続税の試算をしたら、想像を超える税額が出てきた。

でも、もう何もできない。 お父様はすでに亡くなっている。

先生は心の中でこう思うはずです。

「なんで、もっと早く準備しておかなかったんだろう。」
「あのとき一言声をかけていれば、全然違う結果になっていたのに。」

財産の組み替えも、贈与の活用も、信託の設計も、 全部「生前にやっておくこと」です。

亡くなってからでは、打てる手が極端に限られてしまう。

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これとまったく同じことが、会計事務所の組織づくりにも起きるんです。

10人〜15人くらいになって、さあ次のステージに行こうというとき。

そのタイミングで初めて「業務管理が必要だ」「標準ルールがない」「属人化がひどい」と気づいて、
私のところに相談が来ることが、実は一番多いんですよ。

「大須賀さん、うちもっと早くやっておけばよかったですよね。」

そう言われるたびに、私はちょっと悔しくなります。

先生もそう言いながら苦しそうにしていて、
「今からでも全然遅くないですよ」とお伝えしながら、
でも心の中では「もう少し前に来てほしかったな」と思ってしまう。

業務管理の仕組みを整えるのも、相続対策と同じで、
「必要になってから始める」では、選択肢が狭くなってしまうんです。

5人の規模で整えておけば、10人になるときがスムーズ。
10人のときに整えておけば、20人になるときが違う。
20人のときに整えておけば、30人・40人の壁をまた一段上の準備で迎えられる。

「今は小さいから、まだいい」ではなく、 「小さいうちに、次のフェーズを見据えた設計をしておく」

これが、長く伸び続ける事務所に共通していることです。

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【業務管理の本当の目的】3層で考える

業務管理の本当の目的を3層で考える図解

さて、ここで改めて聞かれることがあります。

「業務管理って、結局何のためにやるんですか?」

私はよく「効率化のため」「生産性向上のため」という答え方をされているのを聞くんですが、 それだけではちょっともったいないと思っています。

もう少し丁寧に言語化すると、3つの層があります。

【第1層】所長先生が、ラクになること

「自分がいないと回らない」
「全部自分が把握していないと不安」
「自分がやった方が早い、から抜け出せない」

この状態から抜け出すこと。

先生が現場から少しずつ手を離せるようになって、
本来やりたかった仕事——新しいお客様への提案、大切なお客様との深い関わり、事務所の方向性を考える時間——
に エネルギーを使えるようになること。

これが業務管理の出発点です。

【第2層】職員さんが、安心して働けるルールが生まれること

先生がラクになるだけでは、まだ半分です。

職員さんの側からも考えてほしいんです。

「誰かが休んだら、自分に仕事が全部来そうで怖い」
「頑張っているのに、何を評価されているかわからない」
「仕事のやり方が人によってバラバラで、自分のやり方が正しいのか不安」
「突発対応のたびに、また業務が増えるのかと憂鬱になる」

こういった不安が、静かに職員さんを追い詰めていきます。

業務のルールが整い、進捗が見えるようになると、 こういった不安が解消されていく。

誰かが急に休んでも、チームでフォローできる体制がある。
頑張りが見えるから、正しく評価される土台ができる。
やり方が揃っているから、迷わず動ける。

職員さんが「この事務所で長く働きたい」と思える環境が、 業務管理によって生まれていきます。

甘やかすということではなくて、 成長できる仕組みと安心できるルールを整えるということです。

【第3層】その結果として、お客様への貢献が厚くなること

所長先生がラクになって、職員さんが安心して動ける組織になると、 何が変わるか。

まず、基本品質が上がります。

試算表を期限通りに届けること。
お客様からの問い合わせに、翌日には対応できること。
担当者が変わっても、同じ水準のサービスを届けられること。

これが「当たり前の品質」として、組織全体で担保されるようになる。

そしてその上に、もっと深い関わりが積み上がっていきます。

効率化で生まれた時間を、 お客様との経営の相談に使う。
節税以外の提案に使う。 地域のビジネスマッチングに使う。

お客様の経営を元気にする支援が、もっと厚くなっていく。

これが、業務管理が目指す本当のゴールだと私は思っています。

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まとめると、こういうことです。

仕事が淀みなく流れて、職員さんが安心して力を発揮できて、
お客様への支援品質が上がり、事務所が長く伸び続ける。

この状態をつくるための土台が、業務管理です。

だから、ツールを入れることも、マニュアルを作ることも、
工程表を整えることも、 全部この先にあるゴールへの手段に過ぎません。

「何のためにやるのか」が先生の中に言葉としてあるかどうか。
これが、うまくいく事務所とそうでない事務所の、一番大きな違いだと感じています。

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「いや、うちはまだ大丈夫です。」

そう思っている先生、そのままにしておくのは、もったいないですよ。

相続対策と同じで、 「必要になってから始める」では、選択肢が減ってしまいます。

今の規模で整えておくことが、次のフェーズへの一番の準備です。

次回からは、具体的に「属人化の正体とそのリスク」についてお話していきます。

「うちも、もしかしてそうかも…」と感じた先生、ぜひ続きを読んでみてください。

では、今日も良い一日を!

(もし「自分の事務所の現状を整理したい」と思ったら、いつでも声をかけてください。一緒に見ていきましょう。)

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