税理士先生が個人事務所から組織経営型事務所になるための3つのポイント

税理士先生が個人事務所から組織経営事務所になるための3つのポイント
こんにちは。フローリーの大須賀です。
最近、30~40代の先生とお話しする機会が増えまして、
「そろそろ正社員を増やしていきたいんだけど、どうしたらいいかわからない」
というご相談をよくいただきます。
開業して数年、 紹介もコンスタントに来るようになって、 売上も2,000万円を超えてきた。
でも、自分の時間がパンパンで、 このままじゃ紹介を断り続けることになりそう…
そんな状況、 心当たりのある先生も多いのではないでしょうか。
実際、私がご支援している先生の中にも、 「引き継ぎがなくても2~3年ほどで1,500~2,000万円に到達する」 という方が結構いらっしゃいます。
それだけ実力のある先生だからこそ、 「このまま1人でやり続けるか、組織化するか」 という岐路に立たれるわけですね。
今日は、 「個人事務所型」から「組織経営型」に移行するために 乗り越えるべき3つのポイントについてお話しします。
少し長くなりますが、 組織化を検討されている先生にとっては 参考になる内容だと思いますので、 ぜひ最後までお付き合いください。
そもそも「個人事務所型」ってどんな状態?
まず、個人事務所型の特徴を整理しますね。
- 売上高が1,000~3,000万円
- 顧客単価は40~100万円程度
- 先生がすべての案件の面談対応をしている
- 申告書と月次業務のチェックも先生が担当
- 入力補助のパートさんが3~5名いる
- 資料回収は一部郵送だが、訪問時に回収することも多い
- とりまとめの正社員がいる場合もある(製造専門)
こんな感じでしょうか。
ぱっと見るとチームっぽいんですが、 この延長線上に「組織経営」はあまり見えません。
なぜか?
一番大きな理由は、 「自分だけしか面談できない状況」が変えられないから なんです。
パートさんが5名いても、10名いても、 結局、顧客対応は全部先生がやっている。
入力スピードは上がっても、 先生の稼働時間は減らない。
これだと、売上の天井は先生の体力の限界になります。
つまり、組織経営に移行するには、 「顧客の面談を社員に担当してもらう」 という、かなり大きなハードルを越える必要があります。
では、そのために何が必要なのか。
大きく3つの観点があります。
- 人に任せるというマインドを持てるか
- 人に任せられるサービスで受注しているか
- 人を採用・教育できるか
順番に詳しく解説していきますね。
ポイント1:人に任せるマインドを持てるか
これ、めちゃくちゃ大事です。
そして、意外と見落とされがちなポイントでもあります。
自分の力だけで事務所を立ち上げ、 発展させてきた先生にとって、 「人に任せる」ということに不安や抵抗を感じるのは当然のことです。
- 自分が築いてきた信頼関係が壊れるんじゃないか
- 同じレベルのサービスを提供できるのか
- 顧問先を失うリスクがあるんじゃないか
- クレームが来たらどうしよう
- 自分の評判が下がるんじゃないか
こういった心配、ありますよね。
先生は、クライアントとの面談を通じて信頼関係を築き、 専門知識を提供することで事業を成長させてきました。
だからこそ、社員が同じようなサービスを提供できるかどうか心配になるのは、 ある意味、当然のことなんです。
よくある「任せられない」パターン
私がご支援している先生の中にも、 「人に任せたい」とおっしゃりながら、 言葉の端々から「結局自分しかできない」と考えている方が非常に多いです。
例えば、こんな口癖の先生。
「彼は○○ができていないから、結局自分が…」
できないことを数える癖があって、 できることが増えたことにフォーカスしない。
そういう思考の癖が見えたりします。
他にも、
「任せたいけど、まだ早い気がする」 「もう少し経験を積んでから」 「この顧客は難しいから、まだ無理」
こういった言葉が出てくる場合、 実は「任せたくない」という気持ちが隠れていることが多いです。
これは能力の問題ではなく、 マインドの問題なんですよね。
2,500~3,000万円で伸び悩む先生の特徴
売上が2,500~3,000万円で伸び悩む先生とお話しすると、 共通する特徴があります。
「人に任せたい」と言いながら、 結局自分しかできないと考えている。
「いい人がいれば任せるんだけど」と言いながら、 どんな人が来ても「まだ早い」と判断する。
これ、無意識のうちに 「自分のやり方じゃないとダメ」 と思っているんですよね。
もちろん、先生のやり方が一番いいのかもしれません。
でも、組織化を目指すなら、 「自分の80%のクオリティでもOK」 という割り切りが必要になります。
どう乗り越えるか
まず、事務所の新しいビジョンを描くことから始めましょう。
「担当者として一流でありたいのか、経営者を目指すのか」
という将来ビジョンの話です。
ここで考えてほしいのは、
- 個人プロを目指す(1人での売上最大化)
- ほどほどの報酬で高タイパ(時間売上2万円以上)でワークライフバランス重視
- 経営者として組織を大きくする
どれを目指すのか、ということです。
どれが正解ということはありません。
ただ、「どちらを目指すのか」は決めるべきだと思います。
経営者を目指すなら、 自分じゃない人が顧客にサービスを提供する形を描くべきです。
そのためには、自分の仕事に対する考え方や、 社会にどう貢献したいか、 お客様の紹介を断り続けることをどう思うか、 他人への期待について振り返りをする必要があります。
自分の気持ちを理解することで、 不安が和らぎ、新しいステップを踏み出す勇気が湧いてくることが多いようです。
一時的な痛みを受け入れる覚悟
職員さんに任せることで、 一時的に紹介が減ったり、解約が増えることもあります。
これは事実です。
先生が対応していた時と比べて、 担当者の対応に不満を感じる顧客は一定数出てきます。
でも、結局そこを乗り越えないと「組織化」には至りません。
まずは小さい担当から依頼して、成功体験を重ねる。
例えば、
- 比較的要望が少ない顧客から任せる
- 単価が低めの顧客から任せる
- 先生と相性が良くない顧客から任せる(意外と担当者と相性が良いことも)
こういった形で、少しずつ任せる範囲を広げていきます。
職員への信頼が少しずつ築かれ、 やがて重要な案件も安心して任せられるようになります。
一歩一歩、ですね。
ポイント2:人に任せられるサービスで受注しているか
ここも見落としがちなポイントです。
そして、個人的にはこれが一番重要だと思っています。
開業前の職員時代に、 事務所の基本サービス以上の対応によって顧客満足度を高め、 多くの紹介を獲得していた先生ほど、この問題が顕著に表れます。
なぜ問題になるのか
代表個人の専門性や人柄に大きく依存したサービスを、 他の社員が同じように提供することは非常に難しいんです。
これは、代表自身が職員時代に確立した成功モデルが影響しています。
- 事務所の標準サービスとは異なる特別なサポート
- 幅広い相談対応による顧客からの感謝
- それによる単価の値上げ、紹介の獲得
こういった成功体験が、開業後も継続して影響を与えています。
その結果、開業後の顧問先は、 代表の対応に満足し、比較的単価の高い顧客が多くなる傾向があります。
これらの顧問先には、 税務以外の様々な経営相談が内在していることが多く、 そのような知見を持たない社員に担当を変更した場合、 顧問先からクレームが発生しやすくなります。
単価を追求しすぎるリスク
特に、1人税理士の場合、 単価を追求しすぎると、人に任せにくい状況がどんどん増えていきます。
例えば、
- 年商5億円以上の顧問先が増える
- 税務以外の経営相談が増える
- 「先生だから」という属人的な期待が高まる
こうなると、担当者に引き継ぐハードルがどんどん上がっていきます。
もちろん、単価を上げること自体は素晴らしいことです。
ただ、組織化を前提にするなら、 「人に任せられるサービス設計」を意識する必要があります。
どう乗り越えるか
解決方法は2つあります。
1つ目は、優秀な人材を雇うこと。
自分と同じ、もしくは近しいレベルで実務提供できる担当者を採用します。
多くの場合、縁故での採用になります。
- 前職の同僚
- 知人の紹介
- 業界内のネットワーク
逆に言うと、縁故以外でこのレベルの人材を採用できる可能性は限りなく低いです。
求人媒体で、
「32歳、会計事務所経験8年、月次監査顧問先40社、 うちMAS監査10社、チームリーダー経験あり」
みたいな人材を見たことがありません。
転職サイトに”存在しない”人なんじゃないかなと思っています。 初代ポケモンのミュウみたいな存在です。(笑)
2つ目は、仕事を簡単にすること。
他の人ができるレベルまで、サービス提供のプロセスを標準化します。
- 顧客との定期面談で話す内容を決める
- 面談のタイミングやアジェンダを統一する
- 各フェーズで行うべきことをチェックリストにまとめる
こういった方法が有効です。
話す内容を狭めるということは、 相談内容が似通っている顧客を一定数集める必要があります。
ここで、ターゲットを決める必要があります。
ターゲティングの3パターン
よくあるパターンをご紹介しますね。
パターン①:業種を絞る
飲食業、美容業、建設業のように業種を絞ると、 悩みがある程度パターン化されるので、 マニュアル化がしやすく、他社事例も流用しやすいです。
例えば、飲食業に特化すると、
- 原価率の管理方法
- 人件費のコントロール
- 多店舗展開時の注意点
- 閉店時の処理
といった相談が中心になります。
これなら、ある程度の経験を積めば、 担当者でも対応できるようになります。
パターン②:売上規模を絞る
創業支援に特化すると、複雑な税務相談が来ないので、 担当者の育成がしやすくなります。
年商3,000万円以下の顧問先であれば、 税務上の論点も限られますし、 経営相談も基本的なものが中心になります。
また、社長も若いので、 若い担当者を採用したほうが話が合う・可愛がられるという側面もありますね。
「若い担当者のほうが、むしろ喜ばれる」
という現象が起きることもあります。
パターン③:クラウド会計に特化する
freeeやMFに特化することで、 売上規模を狭め、オペレーションを画一的にできます。
これには2つの意図があります。
- クラウド会計を使う=比較的小規模な顧問先が多い
- オペレーションが統一される=教育がしやすい
最近、このパターンで急成長している事務所が増えています。
私がご支援している先生の中にも、
- クラウド会計を活用し、若手未経験のみ採用で5年で1億円事務所
- クラウド会計だが記帳代行を積極受注、5年で7,000万円事務所(内部は主婦パートさんが9割)
- クラウド会計×高単価戦略で4年で年商8,000万円
といった事例があります。
面談のOJTは必須
どのパターンでも、マニュアル化と面談のOJTは必要です。
社員がサービス提供の手順を身につけられるよう、 ロールプレイングを行います。
具体的には、
- 最初は代表の隣で面談に同席させる
- 面談の録画を共有する
- 担当者が面談し、代表が同席してフィードバックする
- 担当者だけで面談し、後で報告を受ける
このステップを踏むことで、 社員が実際の対応を学ぶ機会を作れます。
ちなみに、人に引き継ぐ前提であれば、 訪問型よりも来社型・WEB型のほうが望ましいです。
録画もしやすいですし、 同席もしやすいですからね。
ポイント3:人を採用・教育できるか
マインドがあって、任せられる顧客がいても、 組織経営が進まないことがあります。
採用・教育の問題です。
ポイント1は先生の問題が大きく、 ポイント2は先生と顧問先の契約内容次第、もしくはターゲティングの問題になります。
しかし、ポイント3については、 他の事務所よりも先生の事務所で働きたいという社員を見つけ、 教育し戦力化するという、営業に近い戦略や戦術が必要になります。
前提として知っておいてほしいこと
「未経験者・経験者関わらず、小規模の事務所で働くことは躊躇する」
これ、大前提です。
求職者の人は、
- 小さい事務所だから所長の一存で全部決まりそう
- 風通しが悪そう
- 教育制度がなさそう
- 福利厚生が充実していなさそう
- オフィス環境が悪そう
こういった印象を持ちやすいんです。
「伸び盛りの事務所でNo.2になるチャンス!」 と捉える人は少数派なんですよね。
それなりの規模があり、 教育制度がしっかりしている事務所のほうが選ばれやすいのは事実です。
採用はマーケティングである
私は、採用活動はWEBマーケティングに近いと思っています。
紹介でクライアントが増える → 紹介で社員が増える(リファラル採用) 広告でクライアントが増える → 広告で社員が増える
今の採用方法は、面談するまでに求職者が目にするのは全てWEBです。
だから、採用をするということは、 WEBマーケティングをするということなんですよね。
「面談したらうちの事務所のことめちゃくちゃ気に入ってくれるんだよ! だけど、そもそも求職者が来ないんだよ!」
というのは、単純にマーケティング力が低いだけな気がします。
経験者採用の難しさ
特に1人目で経験者を採用しようとすると、 さらにハードルが上がります。
突破している事務所、つまり採用に成功している事務所の多くは、
- 縁故で採用する
- たまたま経験者が来た
みたいなパターンになりますが、なかなか再現性がありません。
また、経験者採用の場合の問題は他にもあります。
- 実務能力が面談だけでは分からない
- 事務所のやり方と合わせてくれるかわからない
- 多くの場合、事務所内のやり方がバラバラになり、さらに社員を入れるのが難しくなる
- 給与が高い
某求人媒体から応募が来る経験者は クセのある人ばかりという話を聞くと、 月の掲載費20万円以上払ってそれってどうなのかなーと思います。
どう乗り越えるか
基本的には、
①未経験者採用を中心とした組織構築
もしくは
②所長の時間単価が2万円を超えるまではパート採用にする
どちらかの方針になると思います。
パート中心の場合
パート中心の組織の場合、 勤務時間がバラバラになりやすいため、 顧客面談を任せるのは難しいです。
中心は記帳代行と社内業務になります。
難易度の高い仕事以外を任せる形なので、 先生の負担は軽減されますが、 「組織経営」というよりは「効率化」に近いイメージです。
未経験者中心の場合
未経験者中心の採用の場合、 目安で年収250~350万円となるかと思います。
1人採用だと失敗する可能性もあり、 できれば2名採用が望ましいです。
なぜかというと、
- 1人だと孤独になりやすい
- 比較対象がないと成長スピードが分かりにくい
- 1人が辞めた時のリスクが大きい
という理由があります。
おそらくオフィス環境も変える必要があり、 ここが経営上最も利益率が低いタイミングといわれます。
売上2,500万円で、人件費が500~700万円増える。 オフィス費用も増える。
利益率はガクッと下がります。
でも、ここを乗り越えると10名規模が見えてきます。
採用サイトの重要性
最後に、採用サイトについて少し触れておきます。
採用で上手くいっていない事務所のサイト特徴TOP3があります。
- そもそも採用サイトがない
- 採用サイトの情報量が足りない
- 採用サイトのターゲット不在
そもそも採用サイトがない事務所が多いので、 ちょっとの改善で大きく差別化できます。
一番簡単な確認方法は、 「事務所名 採用」で検索してみることです。
ここでトップ5に出てくるコンテンツは、 求職者の人は全て見ていると思ったほうがいいです。
求職者の人が何をチェックしているか確認して、 そこを改善するだけで劇的に成果が出る場合もあります。
まとめ:組織化するか、個人プロを目指すか
今の日本は、税理士さんの平均年齢が60代という環境です。
40代で開業される先生方にとっては、 経営者として過ごす期間は長いんですよね。
自分の体力の限界が売上の限界に直結するモデル=個人型で戦い続けるのは、 正直しんどいと思います。
時間売上という考え方
以前、あるコンサルタント養成講座で言われたことがあります。
「準備移動含め、時間売上が2万円いかないようじゃ、プロコンサルタントとして三流」
時間2万円だと、
- 1日5時間稼働で1日10万円
- 月15日稼働で150万円
- 12か月で年商1,800万円
です。
逆に言うと、年1,000時間稼働で2,000万円稼げるなら、 時間単価2万円をクリアしていることになります。
2つの生き方
今、個人事業主型の税理士事務所の先生の働き方は、
①戦闘力めちゃ高なプロコンサルタントの生き方
もしくは
②人に任せることができる経営者としての生き方
のどちらかを選ぶことになると思います。
どちらが正解ということはありません。
ただ、「どちらを目指すのか」は決めるべきだと思います。
組織化を目指すなら
組織化を目指すなら、今日お話しした3つのポイントを意識してください。
- 人に任せるマインドを持てるか → 将来ビジョンを描き、一時的な痛みを受け入れる覚悟を持つ
- 人に任せられるサービスで受注しているか → ターゲットを絞り、標準化を進める
- 人を採用・教育できるか → 採用をマーケティングと捉え、戦略的に進める
この3つは順番が大切です。
マインドがないのに採用しても上手くいきませんし、 サービスが標準化されていないのに人を入れても、 結局「自分しかできない」状態は変わりません。
最後に
ということで、長くなりましたが、 組織化を検討されている先生の参考になれば嬉しいです。
私自身、業務管理ツールの導入支援を通じて、 たくさんの事務所の内部を見てきました。
急成長して勢いがあった事務所なのに、 孤独で辞めていく中間管理職が増えて、 いつの間にか勢いがなくなり、 社員が減っていく…
所長先生の笑顔も消えていく…
そんな状況を見るのはとてもつらいです。
だからこそ、 「仕組み」で解決できることは仕組みで解決し、 先生も職員さんも、 やりがいを持って働ける事務所が増えればいいなと思っています。
ご質問やご相談がありましたら、 お気軽にお声かけください。
それでは、今日も良い一日を!
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