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税理士事務所の「属人化」はなぜ起きるのか。正体とリスクを現場事例から整理します

税理士事務所の属人化問題ヒーロー画像

「うちの事務所、属人化してるんですよね。」

こういうお悩みを持つ先生、本当に多いです。

でも私、ちょっと意地悪な質問をするんですよ。

「それ、困ったことはありましたか?」

すると、「……そういえば、まだ大きなトラブルはないです」とおっしゃる先生がいます。

そうなんです。
属人化って、「今は困っていない」ことが多いんですよ。

問題は、困ったときには手遅れになっていることがある、という話なんです。

今日は「属人化の正体」と「本当に怖い理由」を、現場のリアルな話と一緒にお伝えします。

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目次

属人化には「いい属人化」と「悪い属人化」がある

いい属人化と悪い属人化の違いを示す図解

属人化とは、特定の人しか業務のやり方がわからない状態のことです。

・その人が休むと仕事が止まる ・その人が辞めると、ゼロから作り直さないといけない ・誰もフォローできない

これが属人化です。

ただ、私が思うに、3〜4名以下の事務所での属人化は、むしろ事務所の個性であることが多いんです。

いい属人化の例:先生のこだわりが文化になっているケース

例えば、こんな話があります。

ある事務所では、「LINEの返信は10分以内」というカルチャーがありました。 そこから独立された先生は、「うちは5分以内にする」というさらに進化したスタイルを作った。

朝9時から夜8時まで、PCにLINEを立ち上げっぱなしにして、大体2分以内に返信が来る。 そういう文化を、意識的に作ったんですね。

これって属人化じゃないですか? そうです。でも、これはいい属人化です。

先生のこだわりが事務所のカルチャーとして根付いているもの。 それは他の事務所との差別化にもなるし、お客様の満足度にもつながる。

だから、属人化を全部なくせ、という話じゃないんです。

悪い属人化とは何か:規模が大きくなると牙を剥く

悪い属人化とは何か。

一言で言うと、規模が大きくなったときに、組織の成長を阻むものです。

・標準ルールや基準が決まっていない ・業務のやり方が人によってバラバラ ・誰がいつ何をやっているか、所長にしかわからない ・その人が休んだり辞めたりすると、業務がストップする

こういう状態ですね。

問題は、事務所が3名のうちは見えない。 5名を超えたあたりから、じわじわ効いてくる。 そして、あるタイミングで突然表面化する。

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属人化が顕在化する「3つの危険タイミング」

属人化が顕在化する3つの危険タイミングのイラスト

悪い属人化には、特徴があります。

普段は問題が見えないんです。

担当者がいる間は、その人が記憶と経験で全部カバーしてくれる。 ミスもない。クレームもない。所長も安心している。

でも、ある日突然、問題が表面化します。

① 担当者が退職するとき

引き継ぎをしようとして初めて気づく。

「あれ、この顧客の処理手順、どこにも書いてない」 「この資料、誰に送ってもらってたんだっけ」 「面談でお客様と合意した内容、どこに残ってる?」

人が辞めたとき、初めて「この人の頭の中にしかなかった」ということがわかる。

② 担当者が長期休暇・病気になるとき

休んでいる間、誰も状況を把握できない。 お客様への連絡が滞る。 処理が止まる。 でも所長には報告が上がってこない。

そして数ヶ月後、「先生、月次の試算表、まだですか?」という電話が鳴る。

③ クレームが来たとき

クレームが来ると、必ず「何があったのか」を遡ることになります。

「いつ、誰が、何を、どうした」

これが記録に残っていない。 担当者の記憶を頼るしかない。 でも担当者はもう辞めていることもある。

この3つのタイミングで、属人化はいつも牙を剥きます。

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税理士事務所で属人化が起きる本当の理由

税理士事務所で属人化が起きる本当の理由のイラスト

ではそもそも、なぜ属人化は起きるのか。

悪意があるわけじゃないんですよ。

「マニュアルを作るより処理した方が早い」という構造

一番多い理由はこれです。

今月分は処理終わった。 来月分のためにマニュアルを作った方がいい。 でも、次の案件が来ている。

「マニュアルを5分で作っておいた方がいいかな」という観点にはなかなかならない。

処理に追われているときに、記録を残すゆとりなんてないんです。

仕組みがないと、人は自然に「今できること」を優先します。 これは職員さんの問題ではなく、設計の問題です。

優秀な人ほど属人化しやすいというパラドックス

もう一つ、少し意外な話をします。

優秀な人は記憶力がいい。

過去の処理内容も、顧客の特殊な事情も、全部頭に入っている。 だからマニュアルがなくても困らない。

でも、その人が抜けたとき、その人の頭の中にあったものが全部消える

「あの人がいれば何でも聞けたのに」という状況が、何ヶ月も続くことになる。

優秀であればあるほど、属人化が深く、静かに進行する。 これが、多くの事務所で起きている現実です。

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実際に起きた事例:年間60万円の顧客が解約になった話

属人化による年間60万円の顧客解約事例のイラスト

少し前に、ある先生からこんな相談をいただきました。

顧問料が年間60万円以上のお客様が、解約になったというんです。

原因は何かというと、月次の3表が4ヶ月分、出ていなかった

お客様からは資料がちゃんと届いていた。 職員さんは、真面目にやっていた。 でも、業務が込み合っていてそのお客様の処理が後回しになっていた。

そして、誰もそれに気づけなかった

アラートを上げる仕組みがなかったんです。

先生は「残念ですが、しょうがないですね」とおっしゃっていましたが、声のトーンは明らかに悔しそうでした。

仕事をサボっていたわけじゃないんです。管理の仕組みがなかっただけなんです。

これって、誰が悪いんでしょうか。

職員さんが悪い? 違います。真面目にやっていた。ただ優先順位をつける判断軸がなかった。

これは構造の問題です。仕組みの問題です。

誰かを責めるんじゃなく、仕組みを変えることが答えです。

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属人化が連鎖退職を引き起こすメカニズム

属人化が連鎖退職を引き起こすメカニズムの図解

属人化が深刻になると起きやすいことが、もう一つあります。

連鎖退職です。

担当者が2人しかいないチームで、1人が辞めたとします。 残った1人の仕事量は、単純計算で倍になります。

その状況を見ていた別の職員さんはどう思うか。

「あんなに仕事が増えるなら、私もいつかああなるかもしれない。」

そう思って、問題がなかった人まで辞めていく。

人が少ない事務所ほど、1人が抜けたときのダメージが大きい。 そのリスクを小さくするためにも、属人化を解消して、チームで仕事を分担できる体制を作っておくことが大切なんです。

「あなたが抜けても、みんなでフォローできるから安心して」と言える状態を作ること。

これが、先生の大事な仕事の一つだと思っています。

職員さんを守ってあげないといけないんですよ。

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属人化の解消に必要な3つのセット:標準化・可視化・チーム運営

属人化解消に必要な標準化・可視化・チーム運営の図解

ここが、私がよく現場でお伝えするポイントです。

属人化の反対は、標準化+可視化+チーム運営の掛け算です。

① 標準化:業務のやり方を統一して、誰でも再現できる状態にする

② 可視化:誰が何をいつまでにやっているかが、チーム全員に見える状態にする

③ チーム運営:担当者が休んでも、他の誰かがフォローできる体制にする

この3つが揃ってはじめて、「属人化が解消された状態」と言えます。

逆に、1つでも欠けていると、どこかで綻びが出てきます。

マニュアルはある(標準化)。でも進捗が見えない(可視化がない)。 進捗は見えている(可視化)。でも誰もフォローできない(チーム運営がない)。

どちらも、問題が起きたときに気づくのが遅くなります。

マニュアルを作るだけでは、属人化は解消されません。

この3つが揃ってはじめて機能します。

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まとめ:属人化の正体は「設計の不在」

属人化の正体は設計の不在というまとめイラスト

今日お話したことを整理すると、こうなります。

属人化は、すべてが悪いわけじゃない。 でも、規模が大きくなるにつれて、設計がないことで生まれる悪い属人化が、事務所の成長を静かに阻んでいきます。

そして怖いのは、問題が見えないことです。 退職・長期休暇・クレームのどれかが来たとき、初めて「こんなに積み上がっていたのか」と気づく。

誰かを責めるための話じゃなく、仕組みを作るための話です。

先生も、職員さんも、みんな真面目にやっている。 だからこそ、その頑張りが正しく報われる仕組みを整えてほしい。

次回は、「属人化を解消するとき、何を先に直すべきか」 をお伝えします。 属人化の問題は実は2層に分かれていて、解決する順番があるんです。 ぜひ続きも読んでみてください。

では、今日も良い一日を!

(「うちの事務所、どこから始めればいいかわからない」という先生は、お気軽にお声がけください。一緒に整理しましょう。)

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