製販分離で「声の大きい人だけ優先」を解消 ─ 顧客300社を支える業務の見える化

製販分離で「声の大きい人だけ優先」を解消 ─ 顧客300社を支える業務の見える化
顧客数3倍、1人当たり担当数も倍増する中で、全てのお客様に目が届く体制をどう作るか。製販分離とタスク管理の両輪で、「塩漬け」をなくした会計事務所の取り組み。
とにかく使いやすいなというふうに思っています。期限と今どういう状況かがすぐ分かるようになって、特に業務管理する側としてはすごくやりやすい。必ずFLOWに入れるというルールにしてしまえば、もう完全に「忘れてた」がなくなりました。
税理士法人坂本会計 代表社員 三代川圭太様
Q1. ご事務所のご紹介をお願いします
千葉市中央区にある税理士法人で、昭和53年に創業者の坂本が開設した事務所です。現在はスタッフ20名体制で、役員2名、社員11名、パート7名という構成になっています。
顧問先は約300社で、そのうち約半分が千葉県内の法人・個人のお客様です。業種特化はしておらず、本当にいろんな業種の方をご支援しています。地場に密着した会計事務所という形ですね。
サービスとしては、昔ながらの税務会計が一番大きいですが、記帳代行にとどまらない経理代行、支払いの代行なども行っています。特に力を入れているのがMAS(マネジメント・アドバイザリー・サービス)で、お客様の目標達成をサポートするために、計画を立てて進捗管理を一緒に行っています。
Q2. DX推進、ITツールの活用はどのように始められたのですか
ITツールの活用で一番最初のスタートは、2015年頃にマネーフォワードを入れたことだと思います。それまで資料を見ながら入力していた部分を省力化するところから始まりました。
もともと事務所ではTKCから提供されるシステムを使っている部分が大きかったんですが、TKC以外にもたくさん良いツールがあるということで、サイボウズやチャットワーク、STREAMED、そしてFLOW(当時はSHARES Proと言っていました)なども入れて、どんどんツールを増やしていきました。
同じ頃、ペーパーレス化も進めました。富士ゼロックスのドキュワークスを使って、決算まで完全にペーパーレスで対応できる体制を2年ほどで整えました。
Q3. そうしたツール導入のきっかけは何だったのですか
お客様の数が増えていく中で、採用がお客様の増加に見合わなかった時期があったんです。そうなると、一人が抱える量がどんどん増えていって。
平成21年に約100件だった顧客数が、現在は約300件に。1人当たりの担当数も15〜20件から35〜50件に増えました。しかも入社してくれるスタッフは、会計業界未経験者や税理士試験未受験者ばかりです。
そうなっていくと、やりきれなくなって、できてないものが増えていったり。例えばパートさんに入力をお願いしても、声が大きい担当者の分が優先されて、そうでない担当者の分は後回しになっていたり。お客さんもそうで、こまめにご連絡くださるお客様の業務だけ優先になって、そうでないお客様の業務が後回しになっていました。
それはすごく気持ち悪いと感じていましたし、個人的にも辛いなと思うようになって。その中で一つ一つ改善していこうと考えて、ツールを取り入れていきました。
Q4. 製販分離に取り組まれた理由を教えてください
以前は「補助スタッフ型」という体制で、入力や集計作業をする補助担当者と、それ以外を行う監査担当者という役割分担でした。でも作業を分解して考えると、販売担当者や正社員でしかやりにくいことは、お客様とのコミュニケーションだけなんです。
その他のことは、販売担当者や正社員でなくてもできる。ただ、パートスタッフが1人で入力、チェック、決算、年末調整、確定申告を完結させられるようになるには多くの時間を要します。
坂本会計における製販分離の目的は、お客様が抱える経営課題やお悩みに一緒に向き合う時間を確保することです。
販売担当者には、お客様としっかりコミュニケーションを取り、悩みや課題を共有してその解消をサポートすることを求めています。解消のサポートは、得意なスタッフや外部提携先の力を積極的に活用する。自らで何とかしようと思わず、お客様の悩みや課題を聞くことに注力してほしいと考えています。
Q5. FLOWはご事務所でどのように使われていますか
タスク管理・日報・議事録管理をメインで使っていますが、私自身がよく見る部分は議事録と月次タスクのサマリーですね。時系列で出ますので、検算するときはここから見ています。
窓口担当者から検索をかけて状況を確認して、「このお客様の資料を貰っているはずなのに、なんで会計処理が進んでいないんだろう」など気づきを得て声掛けを行っています。
FLOWで進捗管理をしている業務
- 月次入力代行
- お客様との打合せ
- 法人決算・決算予測
- 中間申告
- 年末調整・法定調書・償却資産
- 個人確定申告
- 納期の特例
期限があり、実施者を明確に割り当てられる業務は、なるべくFLOWにタスクを登録して進捗管理をしています。
Q6. FLOW導入前の課題を教えてください
一人で60〜70社のフロント業務を担当していた時に、誰の会計処理がどこまで進んでいて、いつ面談したかが分からなくなってしまいました。記憶に頼れなくなったんです。
大切なのはしっかりやるべき事をしてベースを築き、プラスで付加価値のあるサービスを提供すること。契約で取り交わしたことをきちんとできてない人がお客様に信頼されるわけがない。「抜け漏れがないようにきっちり管理したい」という課題を抱えていました。
以前は、年末調整などでも個々人が自分の担当分の管理表を作っていて、会社全体では大雑把にしか分からなかった。「50件担当があって20件は納品したけど、30件は未納品」ぐらいの感じでしか。
今だったら、お客さんから資料を全部回収しているのは何件で、回収してないのは何件で、というのが分かる。今この業務がどういうステップになるのかが、全ての業務について全員見られる状態になっているので、それはすごくいいですね。
Q7. FLOWを導入して感じている効果を教えてください

①ブラックボックスの解消
超過しているものが放置されなくなりました。チャットで一覧が流されて、それを見ることによって社員は「これやらなきゃ」となる。放置されたら今度は管理者の方に通知がいくので、放置されない形になっています。
②全てのお客様・スタッフに焦点が当たるようになった
声が大きいスタッフ、声が大きいお客様だけではなく、全てのスタッフ、全てのお客様の業務進捗に焦点が当たるようになりました。
③塩漬けの減少
以前は、入力者から「これが足りない」「これ分からない」という連絡が一回販売担当のところに来て、販売担当がお客さんに聞くんですが、販売担当もいっぱいいっぱいになっていると塩漬けにしてしまう。
今はチャットワークで、入力しているスタッフから直接お客さんに連絡を取れるようにしているので、いったん塩漬けにする部分がなくなっています。
④属人化リスクの縮小
特定の人しかできないというリスクが縮小しました。テレワークへの移行も可能な状況となりました。
Q8. FLOWの評価をお聞かせください
とにかく使いやすいなというふうに思っています。分かりやすいですし、見やすい。
期限と今どういう状況かがすぐ分かるようになって、特に業務管理する側としてはすごくやりやすいですね。
必ずFLOWに入れるというルールにしてしまえば、忘れずに登録して期限もちゃんと入れていれば、もう完全に「忘れてた」がなくなる。それがすごくいいです。
Q9. ステップの設定など、運用でうまくいった理由はありますか
最初にマスターを作るときに、サービス内容によってステップを考えるんですが、基本的に私が全部出しました。そこに対して、他のスタッフから特に異論は出なかったです。
お客さんによって個別の事情はあります。例えば資料を預かって遅くても2週間以内に試算表納品としているんですが、お客様によってはもっと早く、という要望もある。でもそこはなるべく例外を作らないようにしています。
どうしても個別の事情を解消できないものはあるので、そういうものに関しては乗っからない部分で対応はしている。ただ、「そこは柔軟に対応してくれるなら、それ以外の部分は合わせよう」という形になっていると思います。
Q10. DXを推進する上でのポイントやアドバイスをお聞かせください
代表が主導する
スタッフ任せだと進まないんじゃないかなと思います。代表の方が業務のやり方をあまり理解されていないと「やり方はスタッフが知ってるから」となるかもしれないですけど、完全に手を離してしまって「じゃあお願いね」だと多分進まない。代表が主導になって「これやるんだ」という姿勢が必要だと思います。
例外を作らない
代表自身がかなり業務に参加している場合、その人が例外を作ってしまうと「じゃあ誰がやるの?」みたいになってしまう。なるべく例外を作らないことが大事です。
粗くてもいいから始める
なんでもそうだと思うんですけど、とにかく粗すぎてもいいから始めるのが大事かなと。実際やってみて、ちょっと流れにそぐわないなという部分があれば、都度直していけばいい。まず始めることが大事です。
やりっぱなしにしない
やりっぱなしにならないで、その後の進捗もちゃんと見ていく。うまくいっていない部分を直していく、進めようと思ったけど実際みんな動いてなかったら放置しないで、定期的に測定していくことで流れていくんじゃないかなと思います。
何のためにやるのかを明確にする
多分、何のためにやるんだというところがはっきりしないと、古参のスタッフから「なんでこれやるんですか?前の方が絶対合理的ですよ」と言われたときに言い返せないし、自分自身に迷いが出てきてしまう。そこは何のためにやるのかをちゃんと明確にしておいた方がいいんじゃないかなと思います。
インタビューは以上となります。ありがとうございました。
税理士法人坂本会計様のツール導入と活用術ポイント
ポイント01:製販分離の目的を明確に 坂本会計における製販分離の目的は「お客様の経営課題に向き合う時間を確保すること」。作業の効率化だけでなく、本来注力すべき価値提供のために何を手放すかを明確にすることで、スタッフの納得感と推進力が生まれています。
ポイント02:例外を作らないルール運用 お客様ごとの個別事情は柔軟に対応しつつも、基本ルールには例外を作らない姿勢を貫いています。代表自身が例外にならないことで、全員が同じルールで業務を進められる環境を実現しました。
ポイント03:進捗の可視化で「塩漬け」を防止 タスクの期限と進捗状況を全員が見られる状態にすることで、声の大きい人だけが優先される状況を解消。超過タスクは管理者に通知が行く仕組みにより、放置されない体制を構築しています。
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