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「リーダーを辞めたい」は成長のサイン。会計事務所が中間管理職を失わないための3つの関わり方

「先生、正直に言うと… リーダーを辞めたいんです。 自分の仕事とお客さんに集中したいです。」

ある会計事務所のリーダー職の方から、 こういうご相談をいただいたことがあります。

先生はそのとき、
「よし、じゃあリーダーは辞めて、 1人の仕事に集中してくれ」
と答えようとしていました。

でも私は、 その場でそっと止めさせていただきました。

「先生、それはもったいないと思います。」

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目次

「辞めたい」が出るのは、半年後が多い

会計事務所のリーダーが辞めたいと言い出す時期を示すイラスト

会計事務所でリーダーを任された方が、 こういう状況になるのは珍しくありません。

最初は張り切っていたのに、 半年もすると「壁にぶつかった」という状態になる。

そのとき出てくる言葉が、だいたいこのあたりです。

  • 自分の業務は全く減っていないのに、  チームメンバーの管理まで任されて時間がない
  • そもそもリーダーとして何をすればいいのかわからない
  • 数字の管理が細かすぎて、何のためにやっているのかわからない
  • 上にも下にも相談できず、孤立している感じがする
  • 「自分はリーダーに向いていないんじゃないか」と自信をなくした

どれか1つでも「うちの事務所でも聞いたことがある」 という先生は、ぜひ最後まで読んでいただけると思います。

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「壁」は失敗ではなく、成長のプロセスだ

リーダーの成長プロセスにおける壁と乗り越えを示すイラスト

最初に、大切なことをお伝えします。

「リーダーを辞めたい」という言葉は、 その人がリーダーに向いていないサインではありません。

成長のプロセスに入っている証拠です。

壁にぶつかるのは、 真剣にリーダーの仕事に向き合っているからです。
何も考えずに流している人は、 「辞めたい」とすら思いません。

自分の限界に気づいて、 どうすればいいか悩んでいる。
この状態は、むしろリーダーとして 次のステージに上がる直前のサインです。

そして、この「壁にぶつかった状態」を どう扱うかで、その人の今後が大きく変わります。

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「辞めさせる」ことがなぜもったいないのか

中間管理職を辞めさせることがもったいない理由のイラスト

「辞めたい」という相談に、 そのまま「じゃあ辞めていいよ」と応じてしまうと、 何が起きるでしょうか。

組織にとっての損失として、 せっかく育てたリーダー候補が1人減ります。
次のリーダーを育てるのに、 また数年かかります。

本人にとっての損失として、 「失敗した」という経験と、
「自分はリーダーに向いていない」 という苦手意識だけが残ります。

最初から「自分はプロフェッショナル志向で、 リーダーには興味がない」という方なら、
それはそれで一つの選択です。

でも、 先生が依頼をして、本人も同意して、
リーダーになったのであれば。

「壁にぶつかって自信をなくしたから辞めたい」 という状況で退いてしまうのは、
お互いにとってとても残念な結末です。

急成長していた事務所が、 気づけば勢いを失っていく
—— その陰に、こういう「静かな離脱」が 積み重なっているケースを、 私は何度も見てきました。

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なぜ「いいリーダー」ほど、疲弊するのか

会計事務所の優秀なリーダーほど疲弊する構造のイラスト

「辞めたい」が出てくる背景を理解するために、 少し立ち止まって考えてみます。

システム思考という考え方では、 問題が起きたとき「どこに責任を帰属するか」を 3つの段階でとらえています。

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【第1段階】自分のメンバーが悪い

「うちのチームに問題のある人間がいる」 「あの人さえいなければうまくいく」 という見方です。

原因を特定の個人に向けている状態です。

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【第2段階】他のチームが悪い

「うちのチームは頑張っている。 でも、あの部署が協力してくれない」 という見方です。

原因の矢印が、 自分たちの外の部門や環境に向いています。

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【第3段階】どのチームも悪くない。それぞれ頑張っている

「みんな一生懸命やっている。 でもうまくいっていない。 問題は仕組みや役割設計にある」 という見方です。

原因を個人や部門ではなく、 組織の構造そのものに帰属できている状態です。

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第1段階・第2段階のリーダーは、 適切なフィードバックや 場合によっては役割変更が必要です。

ただ、ここで大切なことがあります。

第3段階に到達できているリーダーほど、 実は「辞めたい」になりやすい。

なぜかというと、 責める相手がいないからです。

「誰も悪くない、みんな頑張っている」 とわかっているからこそ、 誰にも矛先を向けられない。

だから、全部自分の中に抱え込む。

「自分がもっとうまくやれれば」 「自分のリーダーシップが足りないんだ」 と、静かに自分を責め続ける。

その結果として、 じわじわと疲弊して、 「辞めたい」が出てくるのです。

誰も責められないから、 自分で抱え込む。 これが、いいリーダーが折れるメカニズムです。

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リーダーが孤独になる3つの理由

リーダーが孤独になる3つの理由を示すイラスト

こうした構造的な問題に加えて、 会計事務所特有の3つの原因があります。

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理由① リーダーの役割を誰も教えていない

税理士業界でリーダーになる方は、 まず実務のプロとして力をつけます。

簿記を学んで、 申告書が作れるようになって、 顧客対応ができるようになって、 そこからリーダーに任命される。

でも、リーダーとして 「どう人を動かすか」 「チームの課題をどう把握するか」 「メンバーの悩みにどう向き合うか」 を、体系的に学ぶ機会はほとんどありません。

「優秀なプレイヤー」と 「優れたリーダー」は、 全く別のスキルが必要なのに、 その準備なしにリーダーを任される。

これが、半年で壁にぶつかる 一番大きな構造的原因です。

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理由② プレイヤーの仕事が減らないまま、管理の仕事が追加される

よく聞くのが、こういう状況です。

「担当顧客は40社のまま。 でも、チームメンバーの進捗確認と フォローも自分がやることになった。」

これは、リーダーへの移行が 半端な状態のまま進んでいるということです。

プレイヤーとしての仕事を抱えながら、 マネジメントの仕事も同時にこなす。 どちらも中途半端になって、 「自分は何者なのか」 という迷いが生まれます。

時間的にも、精神的にも、 余裕がなくなるのは当然です。

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理由③ 相談できる人がいない

一番きついのが、これです。

上(所長)には「うまくいっています」 と言わなければいけない気がする。

下(メンバー)には、 リーダーとして頼りない姿を見せられない。

外(他事務所のリーダー)とは、 接点がない。

結果として、 中間管理職は本当に孤独です。

私自身、前職でリーダーを経験したとき、 チームを3回解散させています。
上にも下にも相談できず、 本当に孤立した感覚がありました。

売上の成果が出ない、
メンバーのフォローが行き届かない、 様々な課題がありました。
「全体のための解散」と言われても、 正直、納得できなかったです。

その時、私自身に悪意があったわけではありませんでした。
リーダーシップの発揮方法がわからなかった。
部下との関わり方がわからなかった。 それだけだったと思っています。

ただ、結果として、 相手と建設的な関係が築けなかったり、
独りよがりになっていた部分もあって、 それは素直に反省しています。

その後、自分なりに外に学びに行きました。
コーチングや組織開発、 キャリアコンサルタントの資格取得など、
その分野だけで200万円くらいは使ったと思います。

最終的には10名くらいのチームを 任せてもらえるようになりましたが、
そこに至るまでに、 本当にたくさんの失敗と、 周りの人の支えがありました。

でも、これは特殊なケースだと思っています。

自分で「学びに行こう」と動ける人間は、 ごく一部です。
多くのリーダーは、 しんどいまま1人で抱えて、 静かに折れていきます。

だから言えるのですが、 その孤独さは、
外から見ているよりずっとしんどいです。
そして、適切なサポートがあれば、 越えられたはずの壁がほとんどです。

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「辞めたい」と言ってきたとき、所長はどう向き合うか

リーダーの成長を支える仕組みづくりのまとめイラスト

では、具体的にどうすればいいのか。

私が現場でお伝えしている、 3つの関わり方をお伝えします。

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関わり方① まず「何がしんどいか」を聞く

「辞めたい」という言葉が出たとき、 最初にやることは一つです。

「何が一番しんどかった?」と聞くこと。

解決策を出すのは、その後です。

よくあるのが、 「じゃあこうしよう」「それは違う」と、
先生がすぐに答えを出してしまうケースです。

でも、リーダーが求めているのは まず「わかってもらえた」という感覚です。

自分の状況を話して、 「そうか、それは大変だったね」 という言葉をもらえるだけで、
気持ちが整理されることがあります。

じっくり「聞く」ことが、最初の一歩です。

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関わり方② 「リーダーの役割」を一緒に整理する

リーダーの役割を一緒に整理する関わり方のイラスト

話を聞いた後、 こういう問いを投げかけてみてください。

「そもそも、うちのリーダーに 何を期待しているか、ちゃんと伝えてたかな?」

多くの場合、 リーダーの役割は曖昧なままです。

「チームをまとめてほしい」 「後輩を育ててほしい」 「案件の進捗を管理してほしい」

こういう言葉は伝えていても、 「どこまでが自分の仕事で、 どこからが所長に相談すべきことか」 の線引きが曖昧なまま、 1人で抱え込んでいることがほとんどです。

リーダーに求めることを 紙に書き出して、一緒に確認する。 「これはリーダーの仕事じゃないから、 私に相談していいよ」と明示する。

これだけで、 「1人で全部やらなきゃいけない」 という重圧がかなり軽くなります。

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関わり方③ 「小さく成功する経験」をセットで渡す

リーダーが「辞めたい」と言うとき、 多くの場合は「失敗した」と感じています。

この状態で辞めさせてしまうと、 失敗経験と苦手意識だけが残ります。

逆に、この壁を一緒に越えた経験が残ると、 その人は次の壁に当たっても 「あのときも乗り越えられたから、今回も大丈夫」 と思えるようになります。

具体的には、こういうことです。

「じゃあ、次の3ヶ月だけ試してみよう。 こういうサポートをするから、 1つだけこれをやってみてほしい。」

小さなミッションと、 小さなサポートをセットで渡す。

失敗させないためではなく、 「小さく成功する経験」を積ませるためです。

この積み重ねが、 リーダーとしての自信をつくります。

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ただし、例外もある

ここまで「辞めさせないほうがいい」と お伝えしてきましたが、 例外もあります。

先ほどのシステム思考の段階で言えば、 第1段階・第2段階のまま止まっているリーダーは、
一旦役割を見直す判断も必要です。

  • 「自分はちゃんとやっているのに部下がダメだ」という考えから動かない
  • 本人は「チームのため」と言いながら、自覚なくメンバーに負担をかけている
  • メンタルが非常に悪い状態にある

こういう場合は、 厳重注意や役割変更が必要なこともあります。

前者はフィードバックが先、 後者はケアが先です。

「辞めたい」という言葉の裏に 何があるのかを見極めることが、
最初の「聞く」ステップで大切な理由はここにあります。

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「外の力」を使うことも選択肢に入れてほしい

外部の力を活用するという選択肢を示すイラスト

もう一つ、お伝えしたいことがあります。

リーダーが「上にも下にも相談できない」 という孤独な状態を解消する方法として、
外部の人間を使うという選択肢があります。

所長が直接フォローするのが 一番理想的ですが、
日々の業務の中でそれが難しいケースも多い。

そういうときに、 定期的に話を聞いてくれる第三者がいるだけで、
リーダーの精神的な安定は 大きく変わります。

外部コンサルでも、 他事務所のリーダーとの交流の場でも、社外メンターでも構いません。

「うちのリーダー、最近しんどそうだな」 と感じたら、
社内だけで解決しようとせず、 外の力を借りることも検討してみてください。

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「育てる文化」が、事務所の一番の資産になる

最後に、少し大きな話をします。

リーダーを1人守ることは、 その人を守ることだけではありません。

「この事務所は、壁にぶつかっても サポートしてくれる」という空気が、 事務所全体に広がります。

すると、 次にリーダーを任された人も、
「しんどくなったら相談できる」 という安心感を持てます。

逆に、 「壁にぶつかった人は辞めさせる」 という経験が積み重なると、
「この事務所では失敗できない」 という空気が生まれます。

失敗できない場所で、 人は挑戦しません。

挑戦しない組織は、 成長できません。

急成長していたのに、 いつの間にか勢いを失っていく事務所の多くで、
こういう「静かな連鎖」が起きています。

「リーダーを育てる文化」をつくることが、
事務所の長期的な競争力につながります。

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まとめ:「辞めたい」を入り口にする

リーダーが「辞めたい」と言ってきたとき、
それは終わりではなく入り口です。

その言葉の裏には、 真剣にリーダーの仕事と向き合ってきた証拠があります。

3つの関わり方をもう一度確認します。

  • 関わり方① まず「何がしんどかったか」を聞く  
    → 解決策より先に、「わかってもらえた」感覚を渡す
  • 関わり方② 「リーダーに何を期待しているか」を一緒に整理する  
    → 役割の曖昧さを取り除き、1人で抱え込む状態を解消する
  • 関わり方③ 「小さく成功する経験」をセットで渡す  
    → 失敗経験ではなく、越えた経験を積ませる

「もったいない」と私が感じるのは、 先生も職員も本気なのに、
関わり方の設計で 互いにすれ違ってしまうケースです。

正しい向き合い方で、 一緒に壁を越えていきましょう。

今日も良い一日を!

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